2011年07月12日
奇跡の生還 アポロ13号
古い本だけど最近新聞に評が出ていたので読みたくなった。
「…それにしても、たった10年で、人間を月に着陸させて無事に帰還させるだけの技術を開発してしまうとは、驚くべき技術力である。
日本はつい最近、初の完全国産ロケットH2を開発したことを誇ったが、これはアポロ宇宙船を打ち上げたサターンⅤ型ロケットと比較したら、総重量において11分の1、推進力において10分の1程度の可愛いロケットである。それなのに、H2ロケットの1段目のエンジンLE7の開発だけで、日本は10年もかかっているのである。そして有人宇宙技術はというと、いまだに日本はゼロである。アポロの成功から、もう四半世紀以上たっているのに、日本はあの時代のアメリカのまだ足元にも及ばないのである。単なる技術力だけでなく、アポロ計画のような壮大なビッグプロジェクトのマネジメント能力もなければ、まして、このアポロ13号で起きたようなとてつもない危機に対応する危機管理能力もない。
最近、日本の国力はアメリカを凌駕したとか、日本も世界有数の経済大国になったのだから、世界経営に参加しなければならないといった議論がさかんに聞かれるようになったが、世界経営に参画する能力というのは、貿易黒字とか為替水準といった経済力ではかれるものではない。まず何よりも巨大プロジェクト、巨大危機のマネジメント能力が必要になってくるのである。世界経営はアポロ計画より大変なのである。日本はアメリカに、経済力においてはようやくならぶようになってきたものの、そういうマネジメント能力においては、決定的に立ち遅れているというのが実情である。…」
アポロ13号の輝かしい失敗は1970年、立花隆が本書を翻訳して上の序文を書いたのが1994年である。